事例|首長選・都道府県議選・政令市議選

陣営は「接戦」と思っていた。調査は、差が開き続けていた。

ある地方選挙、告示1か月前から投票直前まで。新人の陣営が、調査とともに何を知り、何を決めていったか。一つの選挙の物語として、お読みください。

ある地方の選挙に、二人の新人が立ちました。A候補は地元の組織の支援を受け、B候補は人気の高い現職の首長に近い立場でした。A候補の陣営は、初めての選挙を前に「接戦になる」と考えていました。街頭の反応は悪くない。しかし相手には首長の追い風がある。手応えと不安が、同じ量だけあったのです。

ここからは、その陣営が告示1か月前から投票直前までに行った調査を、時間の順に追います。当社が手がけた複数の調査をもとに、特定の選挙とは切り離して構成した事例です。

第1章|告示1か月前

10ポイントの差は、本物か

最初の電話調査。固定電話に自動音声で発信し、約300人が最後まで答えました。結果はA候補28%、B候補17%。「接戦」と思っていた陣営にとって、10ポイント余りの差は意外でした。

第1回 電話調査・約300件
A候補B候補まだ決めていない
第1回約300件
28
17
55
+11
300件での差の誤差は±7ポイント程度。差は誤差を超えていたが、未定が半数以上。

ただし、喜ぶには早すぎました。回答者の半数以上が「まだ決めていない」と答えていたからです。10ポイントの差は、残り55%がどちらに動くかで簡単に消えます。

そこで陣営が最初に決めたのは、全体の数字を追うのではなく、「決めていない人は誰か」を見ることでした。未定の多くは70歳以上。女性が多く、前回の選挙で誰に投票したか覚えていない人が目立ちました。街頭で手を振ってくれる人たちとは、別の人たちでした。

この時点で陣営が手にしたもの

「勝っているかもしれない」という感触ではなく、「半数が決めておらず、その人たちはこういう人だ」という事実。次の一手は、この人たちに届く活動に向きました。

第2章|告示直前

この選挙は、何の選挙なのか

告示の直前、2回目の電話調査。A候補31%、B候補20%。差は11ポイントでほぼ変わらず、未定はまだ半数。数字より大きな発見は、別のところにありました。今回は「現職の首長をどう評価するか」を聞いていたのです。

首長を「強く支持する」人は、B候補に36%、A候補に16%。「支持しない」人は、A候補に51%、B候補に7%。有権者は、候補者ではなく首長を軸に投票先を決めていました。そして一番人数の多い「どちらかと言えば支持する」という中間層では、B候補27%、A候補24%。わずかにB候補が上でした。

現職首長への評価 × 投票先(第2回電話調査、単位%)
A候補B候補まだ決めていない
強く支持する
16
36
48
どちらかと言えば支持最多の層
22
25
53
あまり支持しない
38
14
48
支持しない
51
7
42
「どちらかと言えば支持」が最大のかたまり。ここだけ、B候補がわずかに上だった。

陣営はここで、負け方を一つ、具体的に想像できるようになりました。この選挙が「首長の信任投票」として語られれば、中間層はB候補に寄る。首長を批判すればするほど、その流れを自分で作ってしまう。

もう一つ、見えたものがあります。同じ時期に始めたWeb調査(18〜69歳)では、両候補がほぼ並んでいました。40代以下に限れば、B候補がはっきり上。固定電話に出るのは60代以上が中心です。電話だけを見ていたら、この層の弱さには気づけませんでした。

この時点で陣営が決めたこと

争点を首長の是非にしない。中間層の未定(70歳以上が多く、福祉を最重視)に、政策の話で届く。若い層は追いすぎない。告示後に同じ人たちにかけ直し、この読みが合っているかを確かめる。

第3章|告示後、同じ人にかけ直す

未定の人たちが、動いた

告示後に2回の電話調査を行いました。3回目はこれまで答えていない新しい人に、4回目は第1回・第2回で答えてくれた人にかけ直す「定点調査」です。同じ人の意見がどう動いたかが、ここで初めてわかります。

投票先の推移(電話調査、単位%)
A候補B候補未定・その他
第1回告示1か月前
28
17
55
+11
第2回告示直前
31
20
49
+11
第3回新しい人
40
21
39
+19
第4回かけ直し
44
25
31
+19

かけ直した第4回で、未定は49%から31%に減りました。減った分の大半が、A候補に回っていました。新しい人に聞いた第3回でも同じ方向が出ています。「流れ」は、たまたま出た数字ではありませんでした。

そして第2章で一番心配していた中間層。告示前はB候補25対A候補22だったところが、第4回ではA候補36対B候補28に転じました。首長批判を前面に出さなかった判断は、少なくとも裏目には出ていませんでした。

中間層
25対22 → 36対28

首長を「どちらかと言えば支持」する層で逆転

「必ず行く」人
47対25

投票意欲の高い人ほど、差が大きい

40代以下(Web)
Bが約2倍

変わらずB候補。唯一の負けている層

この時点で陣営が知ったこと

若い層をWebで補い、年代構成と投票率で補正しても、差は13ポイント。誤差を初めて上回り、「優勢」と言える段階に入った。しかし、まだ半数近くが決めていない。そして優勢という言葉には、別の危険があった。

第4章|投票直前

勝敗は、どこで動くか

優勢とわかった陣営が最後に知りたかったのは、「この差がどうなったら消えるか」でした。未定の人を首長評価が同じ層と同じ比率で割り振ると、基準はA候補60%、B候補40%。ここから、相手に有利な前提を一つずつ重ねていきました。

もし、こうなったらA候補との差
① 若い層の投票率が、前回より大きく上がったらまだ +16
② 首長を支持する人が、調査より多く6割いたらまだ +18
③ 中間層の未定の8割が、B候補に流れたらまだ +8
①+②+③ 相手に有利なことが、すべて起きたらまだ +2
④ A候補の支持者の2割が、投票に行かなかったら+14
③+④ 中間層が流れ、支持者が休んだら+2(誤差内)
①〜④ すべてが重なったらB候補が逆転

相手が伸びる要因をすべて重ねても、A候補はわずか2ポイントですが、残りました。逆転するのは、そこに「自分の支持者の2割が棄権する」が加わったときだけ。負ける筋書きはすべて、相手の強さではなく、自分の支持者の足が止まることを含んでいました。

皮肉なことに、その足を止める最大の要因は「勝っているらしい」という空気です。優勢とわかった瞬間に、陣営がいちばん警戒すべき相手は自分たちの気の緩みになりました。

最終盤の方針攻めではなく、守る。

新しい層を取りに行くより、リードを削る要因をつぶす。

  1. 1
    支持層を確実に投票所へ。「必ず行く」と答えていない3割に期日前投票を呼びかけ、陣営内は引き締める。
  2. 2
    争点を首長の是非にしない。逆転した中間層を、相手側に押し戻さない。
  3. 3
    中間層の未定に顔の見える接触を。残った人は告示前より相手寄り。放置すれば流れる票。
  4. 4
    支援組織の支持層を取りきる。組織の支援があっても、一部は相手に向いていた。
  5. 5
    若い層への発信は続けるが、資源は割きすぎない。
終章

この陣営は、1か月前に「接戦だ」と思っていました。もし調査がなければ、最後の数日は首長批判を強め、若い層を追いかけ、「勝っている」という手応えのまま投票日を迎えていたかもしれません。調査が与えたのは、勝つ方法ではなく、負けない理由を自分たちで確かめる手段でした。初めての選挙に、それは要らないものでしょうか。

この選挙の第4回レポートを、そのままの形でお送りします。A4・9ページのPDF(架空の選挙・架空のデータで作った見本)を、資料請求で無料でお送りします。

本事例は、当社が実施した複数の調査をもとに構成したものです。実在する特定の選挙・候補者を示すものではありません。数字はすべて架空の値です。

この事例で使った調査
電話調査 スタンダード

300件 × 4回

告示1か月前・直前・告示後2回。2回目以降は−20%。

Web調査

300サンプル

若い層の支持と投票意欲を補完。年代補正した統合推計に。

納品物

A4レポート 各回

推移・クロス集計・未定層の顔ぶれ・勝敗が動くシナリオ・残り日程ですべきこと。

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首長選・都道府県議選・政令市議選の情勢調査は、同じ選挙区では先にご依頼いただいた1陣営からのみお受けします。日程が見えた段階でご相談ください。